Vol.05 文化財は「人の思い」を未来へつなぐ。美と知恵を次世代へ
中日新聞「みんなではじめるSDGs」では
各分野でSDGsを実践される方たちにリレーインタビューを行います。
今回は徳川美術館 管理部長の山本索さんに
文化遺産の継承とSDGsの関わりについてお話を伺いました。

徳川美術館 管理部長
山本 索氏
保存と活用の循環で未来へつなぐ
ー徳川美術館の特徴と役割について教えてください。
徳川美術館は1935(昭和10)年に開館した私立美術館です。所蔵品は1万件を超え、その中核を徳川家康の遺品類「駿府御分物(すんぷおわけもの)」が占めています。さらに尾張徳川家に伝わった武具や茶道具、能道具、婚礼調度などの「大名道具」がまとまって残されていることも大きな特徴です。
また、これらの品々は作品だけでなく、「道具帳」と呼ばれる記録によって由緒や来歴も伝えられています。作品の中には、その時代を生きた人々の価値観や知恵、祈り、美意識が刻まれています。当館は文化財を厳格に研究・保存するとともに、その背景にある歴史や人々の暮らし、価値観を現代へ伝える役割を担っています。
ーSDGsの観点から文化財保護をどのように考えていますか。
文化財を守り続けるには、専門知識だけでなく、人材や設備、そして社会全体の理解と支援が欠かせません。地域の人々が「この文化を残したい」と共感することが、文化財を未来へつなぐ力になります。そのため私たちは、文化財を保存するだけでなく、多くの方に公開し、その価値を知っていただくことを重視しています。「保存・修復」「公開」「価値の理解」「支援」のサイクルを回し続けることこそが、持続可能な文化遺産の保全につながると考えています。
ー文化財の価値をどのように伝えていますか。
作品には、その時代を生きた人々の思いや物語が宿っています。そうした背景を知ることで、来館者の皆さんに感動や発見を感じていただきたいと考えています。そのため当館では年間を通じて多様な展覧会を開催し、文化財をさまざまな視点から紹介しています。文化財を身近に感じてもらうことが、その価値への理解につながると考えています。
人とまちを結ぶ文化財「人間らしく生きる知恵」
ー文化遺産を未来へつなぐために、私たちにできることはありますか。
まずは地域の文化や歴史を知り、親しんでいただくことです。文化財は単独で存在しているのではなく、その土地の歴史や人々の記憶と結び付いています。美術館や博物館へ足を運び、自分たちのまちの歩みを知ることが、「未来へ残したい」という思いを育む第一歩になるはずです。
ー最後に、未来へ残したいものを教えてください。
私たちが未来へ受け渡したいのは、形ある文化財そのものだけでなく、そこに込められた「人間らしく生きるための知恵や感性」です。作品の中には、先人たちの祈りや美意識、自然への敬意、暮らしの知恵が息づいています。古美術を通して先人が何を大切にしてきたかを知ることは、現代社会を見つめ直す手がかりにもなります。文化財の保存・修復を通して、そうした豊かな心や価値観を、次の世代へと確かに引き継いでいきたいと考えています。
